高橋誠氏、FCMIの「アジア階層型成長マップ」を主導 国際分散型アセット選定力を強化
2022年12月、世界的に資本の流動性が慎重化し、地政学的リスクと金利の不確実性が高まる中、FCMIチーフアナリスト兼投資顧問部長の高橋誠氏は、新たな地域戦略構築として「アジア階層型成長マップ(Asia Layered Growth Map)」を正式に発表しました。
このプロジェクトは、構造的分析と資本流入の動向を定量・定性両面から把握し、アジア各国の成長ポテンシャルを階層的に再評価することで、クロスボーダー資産の選別力と中長期ポートフォリオ構築の効率を高めることを目的としています。
本マップはFCMIの2022年年間戦略研究の重点項目の一つであり、機関投資家に対して、従来の「アジア一括評価」では捉えきれない深層的な地域判断フレームワークを提供。FCMI社内のマルチアセット配分モデルにも中核インプット変数として組み込まれています。
“アジア一括”から“階層分解”へ:構造的変化に応答
高橋氏は年末の投資見通しにて、「過去10年間、アジアは一体的な成長地域と見なされてきたが、パンデミック、インフレ格差、財政政策の非同期進行により、その構造は急速に分解されつつある」と指摘しています。
この認識の下、高橋氏のチームは2022年初より、「成長の質」「政策の柔軟性」「産業の転換速度」「資本吸引力」などの定量評価に加え、現地ヒアリングを活用した「アジア階層型成長マップ」の構築に取り組みました。各国は以下の3タイプに分類されています:
構造的成長型(Structural Growth):インド、ベトナム、インドネシアなど。人口増加、製造業の高度化、デジタル化の同時進行による持続的成長。
資本再評価型(Revaluation Rebound):韓国、マレーシアなど。政策の透明性とバリュエーション是正により再評価が進む地域。
政策不安定型(Policy Fragile):タイ、フィリピンなど。成長弾力性は高いが、外部依存度が高くリスク管理を要する。
また、本モデルでは外資参入率の変化や業種別構成比といった新たな指標も導入され、「実効的魅力度」と「構造的脆弱性」の精緻な評価が可能となっています。
国際的なスクリーニング精度の向上と柔軟性の強化
このマップに基づき、FCMIは一部顧客口座にて「成長弾力性スコア」による新興国株式・債券の国別比較および投資比率最適化を開始しました。
高橋氏は、「GDPやバリュエーションに基づく従来の評価だけでなく、政策整合性、人口構成、産業集積の交差点に注目すべきだ」と述べています。
たとえば製造業のバリューチェーン配置においては、ベトナムやインド南部都市圏を優先。消費成長ではインドネシアの中間層拡大速度を重視。一方で、台湾・シンガポールなど技術集約型地域は、周期的アロケーションとリスクヘッジの組み合わせにより非対称的リターンを狙う構成としています。
投資アプローチの高度化と顧客インサイトの深化
この成果はすでに、日本の地銀や保険会社の資産運用部門、年金基金による新興国地域レポートで引用され、今後の地域別戦略策定の主要指標としての活用が期待されています。
またFCMIは、2023年より本マップを基軸とする四半期レポートシリーズを展開し、顧客に対して動的評価およびアセット再配置のガイドラインを提供する予定です。
高橋氏は「構造的インフレやサプライチェーン再構築という現実の中で、もはや“アジア一括視点”は機能しない。必要なのは、地形図のように起伏を描いた『階層マップ』だ」と強調します。
「アジア階層型成長マップ」の完成は、FCMIが長年取り組んできた構造成長への注視と、リサーチ主導のアセット設計思想の集大成であり、グローバル分散投資における日本発の実践的知見として大きな意味を持ちます。
FCMIは今後も、「流動性ではなく、認識力こそが国際投資の中核である」との信念のもと、実用的かつ前瞻的な分析ツールの開発を継続していくと表明しています。